しなやかな血管が命を守る

片足が腫れる足の静脈血栓症に気を付けろ

東邦大学佐倉病院の東丸貴信教授(C)日刊ゲンダイ

 DVTにがんが潜んでいるというと驚かれる方もおられるでしょうが、DVTの約4%に無症状のがんが報告されています。また、整形外科手術では、状況により1~5割程度にDVTが起こることが分かっています。

 急性のDVTでは片側の足のむくみが特徴的です。ただし、膝の裏側のくぼみにある膝窩静脈から上の中枢型(腸骨型、大腿型)と、下の末梢型(下腿型)で症状が異なります。

 中枢型では3大症候である「腫脹」「疼痛」「色調変化」がみられます。症状が重いと疼痛を伴って腫脹しますが、表面の側副血行路が残存しているため、白色調を呈します。

 さらにひどいと、足は虚血、極度の痛み、チアノーゼ(皮膚などが青紫色になる)となります。両方とも、放置しておくと足が腐る可能性が高く、緊急の治療が必要です。DVTの診断には、「Homansテスト」(膝を軽く押さえて足関節を背屈させると、腓腹部に痛みが生じる)や血液「Dダイマー」の上昇が役立ちます。しかし、これらの検査法では必ずしも確定できないため、血管内血流の観察と血管と血栓の直接的な画像観察ができる「超音波検査」が必要です。なかでも血流をカラーで表示できる「ドプラ超音波検査法」は静脈血栓による血管閉塞を調べる標準的検査として普及しています。治療は、血液を固まらせないための抗凝固薬がファーストチョイスで、基本的にはヘパリンの点滴、続いてワルファリンの服薬を行います。

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東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。