「生存率」を正しく調べるのは実は大変です。明らかなインチキでなくとも、いろいろな問題があって評価が難しいのです。
ある抗がん剤治療を行った進行がんの患者の1年後の平均生存率を報告している研究を例に考えてみましょう。
当初、100人の進行がんの患者さんが治療を受けることになりました。このうち50人が抗がん剤の治療を最後まで受けることができ、そのうち50%の25人が1年後に生存していたとしましょう。ただし、最後まで続けることができなかった残りの50人では20%の10人しか1年後に生き残っていなかったとしたらどうでしょう。
この際の生存率はどのように計算すればいいのでしょうか。抗がん剤の治療を終了した50人だけで計算するのがいいのでしょうか。治療を受ける予定であった全員で計算するべきだったのでしょうか。
抗がん剤の治療を行った場合の生存率ですから、抗がん剤治療を最後まで受けた人で生存率を計算するのがいいように思うかもしれません。しかし、治療を開始する前に最後まで治療が続けられるかどうかわかりませんから、治療を最後まで終了できた人たちだけで計算するのでは、生存率を過大に評価する面があります。
そう考えると、これから抗がん剤治療を受けるという患者での生存率は全員を対象にしたときの「1年後の全体の生存者は35人だから35%」と計算するのがいいでしょう。また、「抗がん剤治療を無事終えた人では50%」というほうが正確です。もちろん、その数字もまたこれから抗がん剤を受ける個々の患者さんに当てはまるかどうかわからない、平均値にすぎません。
生存率の評価は誰を対象にするかによって難しいというわけです。
医療数字のカラクリ