寒さでリズムの乱れも 冬の睡眠が「1年の眠り」を左右する

イベントが少ない1~2月はリズムを整えるチャンス
イベントが少ない1~2月はリズムを整えるチャンス(C)日刊ゲンダイ

 寒くてなかなか寝付けない。ついつい夜更かししてしまい、朝起きるのがつらくて布団から出られない……。冬になると、こんな経験をしたことがあるはずだ。だが、冬にキチンと睡眠を整えておかないと、今後1年間の睡眠に悪影響を及ぼすことになる。

 睡眠は、日照時間に影響を受ける。日照時間が長い夏は睡眠が短くなり、短い冬は長く眠るようになる。日照時間が最も長い夏至の季節に比べると、冬至の頃は2時間ほど睡眠時間が長くなるのだ。

 しかし、多くの人は季節による睡眠時間の変化を無視して生活している。すると、そのまま睡眠のリズムが崩れてしまい、冬が終わって暖かくなってきても熟睡できず、体調不良を招いてしまうという。全国で睡眠セミナーを開催している作業療法士の菅原洋平氏は言う。

「人間の体は、光を感知することで環境に対応するための準備を始めるようにできています。日の出時刻が遅い冬は、体が準備を始める時刻も遅くなり、睡眠のリズムがどんどん遅れる方向にずれていく。そのため、〈夜中まで眠れず、朝起きられない〉状態になりやすいのです。これを放置すると、季節が変わっても睡眠のリズムが乱れたままだったり、自律神経のバランスが崩れて体調不良を招いてしまいます」

 気温が低い冬は、活動時や緊張状態で優位になる交感神経が活発になる。そのため、なかなか寝付けない。それでも、交感神経が優位になっている状態なので、なんだかんだ乗り切れてしまう。

 しかし、睡眠時間が長くなる冬こそしっかり眠り、リラックス状態で活発になる副交感神経を優位にして体を休めておく必要がある。

「自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスで成り立っています。片方に大きく振れれば、後からその分だけ逆の方向に大きく振れる。冬に交感神経を大きく働かせすぎると、春になったときに副交感神経が大きく働きすぎてしまい、ヤル気が出なくなったり、体調不良を起こしてしまうのです」

 冬に睡眠のリズムを整えることが、その後の一年間の睡眠を左右する。急激な気温の変化が少ない上、夜更かししがちなイベントが少ない1~2月は、リズムを整える大きなチャンス。リズムが整えば、朝もすっきり起きられる。

■“トリガー”となる行為を見つける

 まずは、冬は長い睡眠時間が必要になることを意識して、夏よりも2時間ほど多く眠るように心がける。睡眠時間を確保してリズムを整える際は、起床時間を揃えて就寝時間を早めるのが基本になる。しかし、いざ普段より早い時間に眠りに就こうと思っても、そう簡単には実践できない。大切なのは自分の睡眠スケジュールの“トリガー”になっている行為を見つけること。

「夜のスケジュールを決めるトリガーとなる行為は、〈入浴〉〈食事〉〈洗顔〉のどれかひとつであるケースがほとんどです。そして、そのひとつの行為をする時間を早めれば、眠くなる時間もその分だけ前倒しされます。普段よりも1時間だけ入浴を早めれば、就寝時間も1時間早めることができるのです」

 就寝時間だけを早めようと思っても難しいが、トリガーとセットにすれば、自然と早く眠くなるのだ。

「また、慢性的な睡眠不足を訴える患者さんに〈冬になると夜9時ごろにテレビを見ながら寝ていることがありませんか?〉と聞いてみると、思い当たる人が多い。しかし、ほとんどが〈まだ寝る時間ではない〉〈早く寝てしまうと、なんとなく時間がもったいない〉といった理由をつけて就寝のチャンスを逃してしまっている。眠くなったら、そのまま寝てしまう日をつくるのも効果的です」

 季節に応じた自分に必要な睡眠時間は、「起床から4時間後に眠気があるかどうか」をチェックする。眠気があるようなら、トリガーの時間をさらに早めればいい。

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