家計簿を見れば病気がわかる

金持ちはたばこより酒に癒しを求める

(C)日刊ゲンダイ

「家で飲む酒類に関しては、所得格差はあまりなさそうだ」という話をしました。ところが、いわゆる「外飲み」の金額を見ると、話はだいぶ変わってきます。

〈表〉には、所得別の飲酒代(外飲み)を載せました。酒といえばたばこ、というわけで、たばこ代も一緒に載せました。それらとは別に、使途不明金として世帯主の「お小遣い」という項目があります。これには、ゴルフ代などは含まれていません。おそらくかなりの額が、飲み代やたばこ代になっていると思われます。

 飲酒代は、年収300万円世帯で年間約1万円(約840円/月)。一方、年収1500万円超世帯では、その6倍近い約5万7000円(約4800円/月)です。さすがに月840円では、立ち飲み屋でも苦しいはずです。

 ただし、使途不明のお小遣いがあります。年収300万円世帯で約7万8000円、1500万円超世帯で約24万円です。そのすべてが飲み代になったとすると、それぞれの月額合計は、7300円、2万5000円ほどになります。感覚的には、こちらの数字のほうがもっともらしく思われます。

 一方、たばこ代は年収700万円世帯が最低(約6700円)になっています。しかしそれを除けば、年収に反比例しているように見えます。実際、650万円世帯のたばこ代は1万5000円、750万円世帯では1万円ほどとなっています。ちなみに700万円世帯の金額が極端に少ないのは、統計誤差の可能性があります。

 厚労省の国民健康栄養調査(2010年)によれば、収入が多い人ほど飲酒の回数が増える傾向にあるそうです。とくに男性で、その傾向が顕著に見られます。ところが喫煙率は、男女とも低所得層ほど高くなるのです。金持ちは酒に癒やしを求め、貧乏人はたばこで気分を紛らわす――という構図が読み取れます。

 こうした傾向は、日本だけではありません。アメリカやイギリスでも、同じような調査結果が報告されています。

 なお、学歴が高いほど喫煙率が低い傾向にあることも、さまざまな調査で明らかになっています。さらに、年収の多い家庭の子供ほど、高学歴になる傾向が強いことも分かっています。どうやら、年収と学歴と酒とたばこと健康は、深いところでつながっているらしいのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。