薬に頼らないこころの健康法Q&A

「多動性障害」の人生は16ビート

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(提供写真)

 ただ、ご子息が落ち着かないので、先生は困っている。本人も毎日叱られて困っている。だから何とかしなくてはいけません。ご子息は、「こころはいつも16ビート」のような活発な少年なのでしょう。現在は、学校や塾でエネルギーが不完全燃焼。そのため、課題は彼のエネルギーをどう燃焼させるかです。

 キーワードは「肉体疲労」です。北海道時代と比べて大きな違いがあります。アイスホッケーから塾へと、放課後の日課が変わったことによるものです。北海道時代は週3回もリンクに立っていたので、かなりの運動量だったはずです。おそらくは毎日、肉体疲労を身にまとって過ごしていたことでしょう。でも、これは悪くはありません。筋肉の疲れは、多動を抑えます。それに、疲労は深い睡眠をもたらし、結果として日中の覚醒度を高めてくれるのです。

 多動は、眠いのに眠れないような、中途半端なときに表れます。目がしっかり覚めて、頭がクリアなら、自制することができます。しっかり目覚めているわけでも、ぐっすり眠っているわけでもない、意識がトワイライトにある時間帯がもっとも多動になります。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。