薬に頼らないこころの健康法Q&A

「多動性障害」の人生は16ビート

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(提供写真)

 これを人工的に目覚めている側にシフトさせる薬剤が「コンサータ」です。でも、これは不自然な方法です。期間限定で飲んでも構いませんが、いずれはやめるべき薬です。ご子息の場合、自分でやめてしまったので、もう飲まなくていいと思います。

 多動性障害に対する根本的な解決法は、「多動には多動を!」です。多動性を建設的に発揮させ、存分に動き、力尽きてぐっすり眠ればいいのです。ご子息の場合、塾のない日にジョギングでもいい、他のスポーツでもいい、何らかの体を疲労させる日課を組むことでしょう。そうすれば肉体疲労が得られて、深い睡眠がもたらされます。翌日の覚醒度はかえって上がることでしょう。

 ただし、睡眠時間は十分にとらなければなりません。塾のない日は早めに就床させ、塾のある日に短くなりがちな睡眠を補うことです。

 多動性を吸収するものをあてがえれば、問題は解消します。「こころはいつも16ビート」でも、表面に表れた行動はかなり落ち着いてくるはずです。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。