専門医が解説 がん細胞だけを攻撃する最新放射線治療とは

(国立がん研究センター中央病院提供)

 手術に代わるがん根治療法として期待されるがん放射線治療法に、新たな「武器」が加わりそうだ。その名も「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)。隣接する正常細胞を傷つけずにがん細胞だけをピンポイントで攻撃できる優れもので、世界最先端の技術だ。従来の放射線治療とは何が違うのか。来年度後半からの臨床研究を計画している、国立がん研究センター中央病院放射線治療科長の伊丹純医師に聞いた。

■正常細胞と混在する細胞もピンポイント攻撃

「この治療法は、がん細胞に取り込まれやすい特定の“ホウ素”化合物を体内に注入し、がん細胞に十分なホウ素を蓄積させたタイミングで体の外側から中性子を照射。がん細胞の中でホウ素と中性子を衝突させることで生じる重粒子線によって、がん細胞を内部から死滅させるものです」

 BNCTは、従来の放射線治療のように「体の外側からX線、重粒子線、陽子線といった高いエネルギーを持った粒子を直接、がん細胞にぶつけて死滅させる」ものではない。そのため、照射にはエネルギーが低い中性子が使われ、ターゲットとなるがん細胞に到達するまでの正常細胞を傷つけるリスクも少ないという。

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