専門医が解説 がん細胞だけを攻撃する最新放射線治療とは

(国立がん研究センター中央病院提供)

「がん細胞に照射する中性子を作り出すには、当初は原子炉が必要だったためです。その設備を持つ研究機関の数が限られていて、臨床数が十分ではなく、どんながん患者さんに効果があるのか、その適応がハッキリしなかったのです。ところが最近、医療用の加速器が開発されました。今後は私どもを含めてより多くの施設で臨床データを蓄積し、実用化するにあたってのルール作りを行うことになります。また、現在、使われているホウ素化合物にはアミノ酸が使用されており、正常細胞にも微量ながら蓄積される。今後はこれも改善されるでしょう」

 いいことずくめのように聞こえるが、がんの放射線治療というと、重粒子線治療に代表されるように巨大施設と莫大な費用が必要なイメージがある。にもかかわらず、前立腺がんのように他の治療法に対する優越性を示せないのではないか、という疑問は残る。

「BNCTの施設費用は、重粒子線や陽子線などの放射線治療施設ほど巨額にはならないのではないかと考えています。最近は、効果のある抗がん剤が次々発売されていますが、抗がん剤は基本的にずっと飲み続けなければならず、その薬剤費を合算すると莫大です。しかし、BNCTなら1回の治療で済む。がん患者のフトコロにも優しいのではないか」

 ホウ素化合物投与後にPET検査することで、より効果的な治療も行える。

 いずれにせよ、がん治療に新たな選択肢が加わるのは喜ばしいこと。今後の動きに注目だ。

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