怖い薬の飲み合わせ

頻尿を治療中なら“胃薬”に注意

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 年を取るほど尿トラブルが多くなります。中でも、トイレが近くなる「頻尿」は多くの人が悩んでいる病気です。治療には薬が使用されるのが一般的ですが、頻尿治療薬は飲み合わせに注意しなければならない他の薬が多いもののひとつです。

 頻尿治療薬の中で多用されているのは「抗コリン薬」と呼ばれる種類の薬です。抗コリン薬は「アセチルコリン」と呼ばれる物質の働きを阻害することでその作用を発揮します。アセチルコリンは「体を休める」ときに作用します。休息時には、ホッと一息ついてトイレに行きたくなりますが、これはアセチルコリンの働きによるものです。そこで、この物質の作用を抑えることでトイレの回数を減らす(頻尿を治療する)のです。

 ただ、世の中には同じようにアセチルコリンの働きを阻害することで作用を発揮する薬がたくさん存在します。たとえば、胃腸薬の一部(鎮痛鎮痙胃腸薬)がそうです。食事をしているときなど、休息時は胃酸の分泌が盛んになりますが、胃酸が出過ぎて胃の粘膜が荒れてしまうとキリキリした痛みが出ます。そこで、休息時に作用するアセチルコリンの働きを抑えて胃腸の動きを弱め、胃酸を抑えるタイプの胃腸薬が使われるケースがあるのです。

 この場合、同じアセチルコリンに働きかけるため、薬の作用が増強されて副作用が強く表れやすくなります。まったく尿が出なくなり、お腹が張って強い痛みが起こる場合もあります。

 同じように、抗うつ薬(三環系抗うつ薬)、抗パーキンソン病薬、抗精神病薬なども抗コリン薬なので飲み合わせに注意が必要です。

 頻尿治療薬を服用している方は、なにげなく他の薬を一緒に飲まないようにしてください。

深井良祐

深井良祐

86年岡山県生まれ。岡山大学薬学部大学院在学時に薬学系サイト「役に立つ薬の情報~専門薬学」(http://kusuri-jouhou.com/)を開設。医薬品卸売企業の管理薬剤師を経て独立し、現在は医療系コンサルタントとしても活動。株式会社ファレッジ代表取締役。