家計簿を見れば病気がわかる

単身者の食費と医療費の関係

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 単身者の家計簿は、収入によってどのように違っているのでしょうか。表をご覧ください。まず平均年齢ですが、低所得層ではいずれも60歳を越えています。また有業者比率、つまり働いている人の割合も、かなり低い数字です。低所得層の多くは、年金生活者と考えてよさそうです。

 その支出を見ると、年収が100万円未満の人でも平均120万円以上を使っています。貯蓄を取り崩しているのです。支出は年収とともに増え、200万~300万円の人では200万円近くに達します。入ってくる年金を使い切っているイメージです。

 年収が300万円を超えると一転、平均年齢が下がり、有業者比率がぐっと上がります。このラインが、リタイア組と現役組の境界といえそうです。支出は200万円を超え、年収600万円以上の人ではほぼ300万円に達します。

 消費支出に占める食料(費)は所得に比例して増えています。またエンゲル係数は、年収にかかわらずだいたい25~30%の範囲に収まっています。

 保健医療費は、リタイア組で6万7000~8万8000円ほど。全支出に占める割合にすると、4.5~5.5%ですが、年収が低い人ほど、保健医療費の負担が相対的に重くなっています。とはいえ、最低年収の人でも医科診療代、つまり病院への支払いは、年間わずか1万5000円に満たない額です。

 現役組の保健医療費は9万円台。リタイア組とそう大して違いません。支出に占める割合は小さく、年収600万円超の人でわずか3%にとどまっています。しかし内訳をみると、医科診療代、つまり病院への支払いが突出しています。これは「高額療養費制度」の影響かもしれません。

 これは1カ月の医療費が一定額を超えると、超過分がほとんどタダになる制度です。所得が多い人(年収770万円以上)は、その限度額も高く設定されています。逆に所得が低い(370万円未満)と、限度額も下がります。さらに70歳を越えると、医療費の自己負担分が2割、75歳以上では1割に減ります。

 単身者の中には、老後の医療費を心配する人が大勢います。しかし、この数字を見る限り、あまり神経質になる必要はありません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。