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【歯の除菌】鶴見大学歯学部付属病院・3DS除菌外来(神奈川県横浜市)

鶴見大学歯学部付属病院の花田信弘教授
鶴見大学歯学部付属病院の花田信弘教授(提供写真)
歯周病患者は生活習慣病の予備群

「歯医者は歯を治療するところ」というのは昔の話。近年は遺伝子解析の進歩などで、虫歯や歯周病の原因菌が体のさまざまな病気を引き起こす発症リスクになることが分かっている。同外来は「3DS」という治療法を用いて、虫歯菌や歯周病菌を除菌することで、全身疾患の予防を目的とした専門外来だ。

 3DSとは「デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム」の略称。同大歯学部・探索歯学講座の花田信弘教授が、国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)在籍時代の1999年に開発した治療法だ。健康保険は使えないが、現在全国約200施設の歯科診療所が導入している。

■口腔内をきれいにして全身疾患を予防

 同外来で臨床の責任者を務める山田秀則助教はこう言う。

「虫歯や歯周病は、口の中にできた“傷口”だと認識してください。口腔内には700菌種、10億個以上の雑菌がいて通常なら悪さをしませんが、傷口から入り血流に乗って全身に広がると、菌血症となってさまざまな臓器に感染して慢性炎症を引き起こすのです」

 簡単にいえば、虫歯や歯周病の状態は、バイ菌がたくさんいるドブの中で傷口を開きっ放しにしているようなもの。日本歯科医師会のエビデンス集に挙げられている虫歯や歯周病が発症に関係する疾患は動脈硬化、高血圧、糖尿病、肺炎、がん、心筋梗塞、脳卒中、メタボ、認知症、関節リウマチ、妊婦の低体重児出産など数多い。

 イタリアの研究データでは、歯周病の治療をして2カ月間、除菌治療をすると、初期の動脈硬化であれば改善することが確認されているという。

「実は、歯肉炎から始まる“歯周病”という生活習慣病予備群は、小学生くらいからスタートしています。ですから本来、理想としては子供のころから除菌治療を開始した方がいいのです」

 3DS除菌は2~4週おきに5回通院(4カ月以内)して、1回分の治療になる。具体的には、歯型を取って上下のマウスピースを作り、そこに薬を塗って5分間、歯にはめて除菌をする。除菌薬は、通院時に測定した虫歯菌や歯周病菌の量によって10種類の中から選定する。体の方も血圧測定、体組成計測定で状態を確認し、栄養指導や運動指導も同時に行う。

「マウスピースと薬は自宅に持ち帰ってもらって、朝晩の歯磨きの後に1日2回、5分間の除菌を毎日継続してもらいます。そして、3~6カ月くらいの間隔で定期的に外来に来てもらい、虫歯菌と歯周病菌のチェックをして薬の調節をします。菌が増えていなければ、フッ素の塗布を続けます」

 最初の除菌にかかる費用は、同外来の場合はマウスピースの作製代金を含めて6万円(税別)。2013年4月に同外来が開設されてからの初診登録者は44人で、男女比は4対1。受診希望者は、生活習慣病の発症が気になり始める50~60代の男性が圧倒的に多いという。

【データ】
曹洞宗大本山總持寺が創設した大学の歯学部付属病院。
◆受付診療科=補綴(ほてつ)科(予約制)
◆スタッフ数=歯科医師・常勤6人(非常勤6人)
◆3DS除菌実施数=年間延べ220件