ウィル・スミス演じる主人公は、実在の神経病理学者ベネット・オマル医師。NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の選手が何度もタックルされることで受ける脳への衝撃と慢性外傷性脳症の相関関係を証明するため、亡くなった元選手の脳を解剖し、「CTE」という病気を発見しました。映画では、それを断固として認めないNFLとのあつれきを描いています。
現実には、これまでにNFL選手の30人以上が死亡解剖でCTEと判明。生存する30人以上がCTEと思われる症状が見られるといいます。これに対し、5000人近い元NFL選手がリーグを相手取り、「事実隠蔽」に対する集団訴訟を起こしました。そして、オマル医師が警鐘を鳴らしてから10年後にあたる昨年、ついに和解が成立したのです。
アメフトはアメリカで最も人気のあるスポーツです。100億ドルという巨額の経済効果を持つプロリーグ以外にも、全米で120万人近い中高校生がプレーしています。この映画をきっかけに人々の意識が高まり、新たな安全対策も論議され始めています。
▽シェリーめぐみ ジャーナリスト、テレビ・ラジオディレクター。横浜育ち。早稲田大学政経学部卒業後、1991年からニューヨーク在住。
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