当事者たちが明かす「医療のウラ側」

原因は腸内細菌の変化 「太るとがんになる」のメカニズム

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「太るとがんになりやすい」という話を聞いたことがあると思います。なるほど、太っている人は胃や大腸などに負担をかけ続けていて、がんになりやすい気もします。

 なぜ、肥満は発がんリスクなのか。実はそのメカニズムはこれまでよくわかっていませんでした。ところが最近、肥満が原因で生じるがんのひとつ、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)による肝がんの発症過程が明らかになってきました。

 肥満により腸内細菌叢が変化し、そこから分泌される二次胆汁酸のひとつ「DCA」が肝臓を構成する肝星細胞の老化を引き起こす。その結果、老化した細胞から分泌されるSASP因子によって炎症性サイトカインなどの炎症性物質を分泌し、肝細胞ががん化するというのです。

 ヒトの腸内には、500~1000種類からなる100兆個の細菌が存在しているといわれています。腸内細菌の塊である腸内細菌叢は、ヒトが代謝できない物質を代謝したり、生体内の免疫を調整することで、ヒトと共存しているのです。

 ところが、肥満になると腸内細菌叢が変化するのは昔から知られていて、それがNASH肝がんの原因だというのです。これが事実なら、将来は腸内細菌叢の変化を調べることでNASH肝がんの発症リスクの予測ができるようになるかもしれません。また、DCAの増殖を抑制することで、NASH肝がんのリスクが低下することなども考えられます。

 いずれにせよ、腸を健康に整えることは生きていくために有益なのです。