漢方達人をめざせ!

人間関係のストレスで眠れない

(C)日刊ゲンダイ

 Dさん(50)は元来、おっとりした性格の男性です。ところが数カ月前に昇進し、喜びもつかの間、上司と部下の板挟みになって、ストレスが高まっているようです。

「夜、ぐっすり眠れない。睡眠薬には抵抗があるので、何か良い漢方薬があれば教えてほしい」

 西洋薬では「眠れない=睡眠薬」という見方をしますが、漢方ではそうシンプルにはいきません。なぜ眠れないのか?

 Dさんの場合、職場の人間関係によるストレスが原因になっていることは確かですが、それを解決する方法はDさんと話していく中で探っていくしかないのです。

 ちなみに、漢方薬を専門に扱う薬剤師は、不調を抱える方と話をする時間を長く設定している場合がほとんど。「すぐに効く薬が欲しい」と思っている人には不満かもしれませんが、その人の体質、性格、生活スタイル、悩みの内容などを考慮して処方しなくてはならないという漢方の性格上、仕方がないことなのです。

 よくよく話を聞くと、Dさんは上司と部下が気持ちよく仕事ができるようにとあれこれ気をまわし過ぎ、頭の中が飽和状態になっている。また、考えることで、気や血が上方に昇り過ぎていることが眠れない原因だと思われました。

 漢方薬では、抑肝散加陳皮半夏をお薦めしました。物事を考え過ぎて眠れない人、ノイローゼ気味で不眠の人にいい。

 漢方薬で心身の状態を整えると同時に、カウンセリングで上司と部下とどう付き合えばいいのか、探っていくことになりました。

 最初にお話をしてから1カ月経ちますが、睡眠の質も改善され、良い方向に向かっているようです。

久保田佳代

久保田佳代

父は乳児院院長、母は薬剤師、長女は歯科医、次女は眼科専門医という医療一家に産まれたが、昨今の臓器医療である西洋医学とは違い、人に向き合い、カラダとココロの両面から治療が行える漢方を志し20余年経つ。昭和薬科大学卒業、老舗漢方薬局を経て、「氣生薬局」開局。サプリメントアドバイザー、漢方茶マイスター、日本プロカウンセリング協会1級など多数資格取得。「不妊症改善における実力薬局100選」に選ばれている。