薬に頼らないこころの健康法Q&A

成績はいいが、高度な装置を扱えない高専生徒への教え方

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 先生がこの生徒に装置の使い方を説明して、「わかったか。じゃあ、どうやればいいか言ってみろ」と聞くと、おそらく完璧に言ってみせるでしょう。次に、「じゃあ、やってみろ」と言うと、まったくできなくて皆を驚かせることでしょう。

 この生徒に対しては、言葉の説明は伝わらないと思います。指導の基本は「身をもって示す」、学習の基本は「見よう見まねで学ぶ」、それが一番だと思います。「今から俺がやる。次にやらせるから見てろ」と言って、まず先生がやってみせる。その後、「俺がやったのを見たか。じゃあ、次、君がやってみろ」という指導法です。

 この生徒には、「次にやらせるから見てろ」と言うことがとても大切です。そう言わないと、先生が「身をもって示そう」としても、何も見ようとしないでしょう。手続き記憶のイメージをつくるための「こころの準備」ができていないからです。「次にやらせるから見てろ」と言われて初めて、先生のやり方を真似ようという気になり、自分なりにイメージをつくりつつ、先生の操作に注目することでしょう。

 先生としては、「次にやらせるから見てろ」と言って、やって見せればそれで十分です。言葉で説明する必要はありません。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。