有名病院 この診療科のイチ押し治療

【気管支ぜんそく】同愛記念病院・アレルギー呼吸器科(東京都墨田区)

同愛記念病院のアレルギー呼吸器科
同愛記念病院のアレルギー呼吸器科(C)日刊ゲンダイ
初診で正確に診断し、その日から治療スタート

 季節の変わり目に症状が悪化しやすい気管支ぜんそく。主にハウスダスト、ダニ、ペットの毛などが原因物質となり、気管支に慢性的な炎症が起こるアレルギー性の呼吸器疾患だ。

 同科は、日本で最初にアレルギー科を標榜した歴史をもち、特に気管支ぜんそくの治療に定評がある。

■日本初のアレルギー科を標榜

 月間延べ約2100人の外来患者の約7割が、気管支ぜんそくの患者で占められている。

「誰でも知っている病気ですが、意外と見落とされていることが多い」と話すのは、同科の黨康夫部長(写真)。気管支ぜんそくの症状の特徴をこう説明する。

「気管支の狭窄によって起こる、長引くせき、タンのからみ、労作時の息切れなどが普段の代表的な症状です。発作を起こすと、呼吸時に“ヒューヒュー”と鳴る喘鳴と呼吸困難を来します」

 しかし、軽症のうちは患者自身もこれらの症状の特徴をはっきり自覚していないことも多く、医療機関を受診してもかぜや気管支炎などと診断される場合がある。実際、同科の初診患者は、複数の医療機関を受診しても診断がつかずに来院するケースが少なくないという。

 結局、いつまでも症状が改善せずに患者間の口コミで同科を受診する人が非常に多く、気管支ぜんそくで来院する約70%は症状が悪化してからの駆け込み患者だ。

「というのも、気管支ぜんそくは明確な検査データ(数値)に基づく診断基準がないからです。そのため診断には、症状の特徴や各種検査の結果を総合して、“証拠を集めること”が必要になるのです」

 同科の診断の手順はこうだ。①特徴的な症状の有無の評価②採血によるアレルギー体質の有無の確認③胸部レントゲンで肺炎や結核などでないことの確認④呼吸機能検査で気道の狭窄や過敏性を調べる。さらに同科では診断の精度を高めるため、⑤呼気中の一酸化窒素濃度の即日測定も行っている。

 気管支ぜんそくが疑われる場合、初診時に①~⑤のすべてを2時間くらいで行えるので、その日のうちに正確に診断できるという。

「即日診断できるので、初診当日からスムーズに治療を開始することができます。治療薬は吸入ステロイド薬を中心に、気管支拡張薬(経口・吸入)、抗アレルギー薬(経口)などを症状の強さや発作の頻度に応じて組み合わせます。頻繁に発作を起こす重症例には、最新の分子標的薬のIgE抗体製剤(皮下注射)も用いています」

■吸入薬は使い方を間違えると悪影響も

 発作時に使う気管支拡張薬(吸入)は、使い過ぎると逆に悪影響を及ぼす場合があるので注意が必要になる。その辺の薬の使い方のノウハウを細かく指導できるのも、アレルギー性疾患に精通する同科の特色だ。

 成人の気管支ぜんそくは根治することはできないが、薬でのコントロールが十分可能。一方で、発作で窒息死する「ぜんそく死」が、いまだに年間2000人弱いる。決して、あなどってはいけない。

 関東大震災(大正12年)のときに米国から送られた義援金をもとに、1929(昭和4)年に開院。
◆スタッフ数=常勤医5人、非常勤医7人
◆年間初診患者数=約1600人
◆気管支ぜんそく患者の割合=外来約70%、病棟約20%