家計簿を見れば病気がわかる

高所得世帯ほど「たくさんの保険に入っている」は間違い

妻帯者と比べると独身者の死亡保険加入率は低め
妻帯者と比べると独身者の死亡保険加入率は低め(C)日刊ゲンダイ

 一般家庭は、生命保険(死亡保険)と医療保険の保険料をどのくらい支払っているのでしょうか。家計調査では、「非貯蓄型保険料」という項目で、それらの合計金額のみが載っています。2015年の調査から、医療保険を独立した項目に分離して集計することが決まっています。今年中にデータが公開されるはずですが、今回は2014年の合計金額を見ていきましょう。

〈表1〉は、2人以上の勤労世帯の保険料です。年収300万円世帯では、年間約8万2000円。月々に直すと約6800円ほどです。しかし、それ以上の所得グループでは年間10万~11万5000円で、ほとんど差は見られません。高所得世帯のほうが保険もたくさん入っている印象がありますが、必ずしもそうでもないのです。

 一般的な死亡保険の保険料は、50歳、10年定期で5000~6000円。医療保険も同じくらいです。したがって、お父さんだけが加入するとすれば、1カ月の保険料の合計が1万~1万2000円。年間で約12万~15万円ほどになります。もっと若いうちに加入していれば、保険料は安くなります。おそらく多くの家庭で、30代前後から「60歳定期の死亡保険」と、「終身の医療保険」に加入していると推測できます。

〈表2〉は独身者の数字です。妻帯者と比べて、かなり少なめな金額です。死亡保険の加入率が低いからでしょう。保険金を残すべき家族がいなければ、死亡保険に加入する意味はありません。

 しかし、医療保険やがん保険に加入していれば、年間の保険料は6万円前後になるはずです。表の数字は、その2分の1から3分の2なので、そこから逆に独身者の加入率は5~6割程度と推計できます。残りの人は、保険に入っていない可能性が高いのです。

 しかし、この連載でたびたび述べてきたように、独身者は妻帯者と比べて、40~60代における3大疾病の死亡率がかなり高めです。死亡率が高いということは、それだけ罹患率も高いということを意味します。また、重症の病気にかかると、長期休業や離職のリスクが高まります。

 独身者のほうが医療費や生活費への備えを万全にしておくべきなのですが、現実は逆になっています。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。