ニューヨークからお届けします。

米で話題 キツツキの脳研究で人間の「脳震盪」が防げる?

 前回、「アメフト選手の間でCTE(慢性外傷性脳症)が大きな問題となり、ウィル・スミス主演映画『Concussion(脳振盪)』で一般の人たちの間でもクローズアップされるようになった」とお伝えしました。

 この影響で、衝突の衝撃を少しでも和らげるヘルメットなどのスポーツギアの開発が次々に行われています。非常に細い金属コイルが張り巡らされ、衝撃を吸収し、分散させる働きがあるヘルメットや、内側に何層にも貼られたゴム製のダンパーが緩衝材となるヘルメットなどです。

 しかし、最も注目されているのはヘルメットではありません。

 映画「脳振盪」の中でアレック・ボールドウィンが演じたドクターのジュリアン・ベイルズ(Julian Bailes)は実在の脳外科医で、彼は脳に出入りする血流に着目しました。

 人間は心臓が1回鼓動するごとに、一定量の血液が頭に出入りします。そこで、軽量の首輪で頚動脈に圧迫を加え、ほんの少し余計な血液を脳に残すことで、衝撃を受けた時のクッションにしようというのです。スプーン1杯ほどの血液でも大きな違いが出るとのことで、現在、高校のホッケー部などでテストが行われています。

 さらにベイルズ医師は、脳振盪を防ぐ方法がもっと自然界に存在しているはずだと言います。たとえば「キツツキ」は、1日に1万2000回も激しく木を突っつくのに、脳にはまったく異常が生じません。キツツキを研究することで、人間の脳振盪が防げるかもしれないというのです。今後の研究の展開が見逃せません。

▽シェリーめぐみ ジャーナリスト、テレビ・ラジオディレクター。横浜育ち。早稲田大学政経学部卒業後、1991年からニューヨーク在住。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com