医療数字のカラクリ

がん患者に見る「雨乞い効果」と「治療効果」

 進行がんに対してある治療をしたら、1年後に全員が生きていたというような話を聞いたことはありませんか。大抵の人は「治療のおかげで生き延びることができた」と考えるはずです。しかし、実際に「治療のおかげで長生きできた」と言うには、多くのなかなか難しい問題が潜んでいます。

 その例として「雨乞い」について考えてみましょう。“日照りが続いて稲が育たない”“雨乞いの踊りをして雨を降らさないとみんな飢えて死んでしまう”という状況にあったとしましょう。

 そこで、村を挙げて雨乞いの踊りをしたところ、「翌日には雨が降った」としたら、多くの人は「それはたまたま雨が降っただけでしょう」と言うに違いありません。

 それは雨乞いの効果で雨が降ったわけではなく、偶然雨が降っただけだというわけです。

「治療をしたら長生きできた」というのも、実はこれと同じかもしれません。偶然、がんにもかかわらず長生きできた人たちばかりに治療をしていたかもしれないからです。

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名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」院長、「CMECジャーナルクラブ」編集長。自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員。臨床研究適正評価教育機構理事。7月末に「検診や治療に疑問を感じている方! 医療の現実、教えますから広めてください!!」(ライフサイエンス出版)を出すなど著書多数。