家計簿を見れば病気がわかる

年収とスポーツ出費 独身者の方が施設利用料に費用を投じる

(C)日刊ゲンダイ

「健康格差」という言葉をよく耳にするようになりました。所得格差が、国民の健康に深刻な影を落としているというのです。この連載でも、世帯年収と食料品の購入パターンが深く関係していることをたびたび取り上げてきました。

 しかし今回は、少し視点を変えて、スポーツへの出費を見ていくことにしましょう。

 スポーツにも、収入による格差があることはよく知られた事実です。なかでもゴルフは、最も典型的な例です。好きか嫌いか以前に、それなりの経済的余裕がなければ、コースに出ることすら、ままなりません。

 表①は、2人以上の勤労世帯の出費をまとめたものです。大きくスポーツ用品とスポーツ施設利用料に分かれますが、そのどちらも年収の多い世帯ほど金額が増えています。とくにゴルフ場の利用料で、「低所得層」と「1500万円超の世帯」とで6倍近い格差があります。

 表②は独身者の数字です。やはりゴルフ場料金で、大きな格差が見られます。高所得層ほど、ゴルフに行く人の割合が高いわけです。

 しかしそれよりも注目すべきは、独身者のほうがとりわけ施設利用料により多くの金額を投じている点です。年収300万円台でも、独身ならスポーツジムに通えます。年収400万円台でも、独身ならゴルフにも行けます。とくに年収500万円台の独身者は、「その他のスポーツ施設」への出費が群を抜いています。テニスコート、プール、スキー場などの入場料のことです。独身者は、自分のスポーツライフをエンジョイしているのです。

 一方、収入の少ない妻帯者は、ウオーキングやジョギングを楽しむか、公共施設で満足するしかなさそうです。

 スポーツへの出費を見る限り、独身者のほうが健康的な生活を送っているように見えてきます。しかし、若くして心臓病や脳卒中などで亡くなる確率は、妻帯者の数倍から10倍です。先週も書いたように、独身者の食生活は、外食や弁当などが中心です。その食生活こそが、短命の原因と考えられるのです。逆に言えば、食事を改善しない限り、多少スポーツで汗を流したところで、効果は薄いということなのかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。