気づいた時には皮膚障害に…冬の「低温やけど」は侮れない

冷えこむ日が多くなったが…
冷えこむ日が多くなったが…(C)日刊ゲンダイ

 相次ぐ寒波の襲来で、グッと冷え込む日が多くなった。こたつ、電気ストーブ、使い捨てカイロ、湯たんぽといった暖房器具をフル回転させている人も多いだろう。それほど危険を意識せずに使っているものがほとんどだが、注意しないと厄介な「低温やけど」を起こす恐れがある。

 低温やけどは、体温より少し高めの温度のものに長時間接触し続けることによって起こる。44度程度の「少し物足りないかな?」と感じるような低温でも、皮膚に触れ続けていれば5~6時間、46度なら1時間ほどで低温やけどになる。50度では数分というケースもある。

 低温やけどに関する知識はあっても、「まあ、大丈夫だろう」と、そこまで気を付けている人は多くない。実際、毎年必ず重症の患者が病院に駆け込んでくるという。
「すみれ皮膚科クリニック」院長の藤田伸弘氏が言う。

「80度を超えるような高温のものと接触すると一瞬でやけどを起こしますが、低温やけどは、熱さや痛みを感じない程度の熱が何時間もかけてジワジワ加わり、ゆっくり進行する。そのため、気づいたときは皮膚の奥の真皮までが障害され、考えている以上に重症化しているケースが多いのです」

 やけどの症状は、Ⅰ度~Ⅲ度の3段階に分類されている。Ⅰ度は患部が赤くなり、ヒリヒリとした痛みがある程度だが、浅達性Ⅱ度になると、水ぶくれができたり、焼けたような強い痛みが起こる。Ⅲ度まで進むと皮下組織が壊死してしまい、治療に数カ月かかったり、場合によっては自家皮膚移植手術が必要になるケースもある。もちろん、やけどの痕は残ってしまう。

■皮下組織が懐死

「低温やけどは、最初のうちは症状が軽く、患部がヒリヒリする程度ということが多いので、そのまま放置されやすい。しかし、見た目以上に重症で皮膚の奥深くが障害されていることも多く、しばらくして水ぶくれなどの症状が表れ、最悪の場合、皮下組織が壊死してしまう。受傷直後は見た目が軽症でも、決して侮ってはいけません」

 低温やけどは、感覚が鈍い脚部で起こることが多く、範囲も500円玉大と広くない場合がほとんどだという。しかし、酔ってトイレに行って保温便座に座ったまま眠ってしまい、起きたときは低温やけどで、太ももの裏から尻にかけて便座の形に潰瘍ができていた患者もいる。また、ノートパソコン、携帯電話、岩盤浴などが原因になることもあるそうだ。

 低温やけどを起こす状況は、睡眠薬使用、泥酔、下肢麻痺、糖尿病神経障害などが挙げられるが、普段の生活の中でもよく起こっている。まずは低温やけどを起こさないような対策を講じたい。

「温かいものが長時間、常に皮膚と接触している状態をつくらないことが大切です。カイロや湯たんぽを当てたまま寝てしまうことで起こるケースが多いので、就寝するときはそうしたものを使わないようにしてください。電気毛布くらいなら、寝返りをすることで皮膚との間に隙間ができたり、温かいものが当たっている位置がずれたりするため、それほど心配しなくてもよいでしょう。日中、使い捨てカイロを貼って活動する分には問題ありませんが、直接皮膚に接触させたり、貼ったまま寝てしまわないように注意してください」

 それでも、低温やけどを起こしてしまった場合、必ず病院を受診すること。見た目以上に重症化しているケースが多いので、自己判断は禁物だ。

「皮下組織が破壊され感染症にかかりやすくなってしまうので、抗生剤の塗り薬で治療をするのが一般的です。その後、傷の治りをよくするために潰瘍治療外用薬を使用します。糖尿病の基礎疾患がある人は重症化しやすく、中には足の指が壊死して切断に至る場合もあるので特に注意が必要です」

 低温やけどを甘く見てはいけない。

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