もちろん、病状によっては、もっと高額になるケースもあります。先日、私が執刀した胸腹部大動脈瘤の患者さんの再手術は、手術の手技だけで約250万円(3割負担で75万円)、これに、人工血管、人工心肺の使用、麻酔や輸血の費用などが加わり、トータルで800万円(3割負担で240万円)ほどになりました。
こうした金額だけをみると、「とても手術は受けられない……」と感じるかもしれません。しかし、いたずらに不安になる必要はありません。公的保険の制度である「高額療養費制度」が使えるからです。高額な医療費がかかってしまったときに患者さんの自己負担を軽減する制度です。
自己負担限度額は年齢や収入によって異なりますが、70歳未満で一般所得(年収約370万~770万円)の人であれば、1カ月の自己分限度額は「8万100円+(医療費-26万7000円)×1%」です。例えば、冠動脈バイパス手術を受けて1カ月の医療費が400万円だった場合は、病院に支払う金額は11万7430円+差額ベッド代や食事療養費で済むのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」