役に立つオモシロ医学論文

「適度なウオーキング」って? 2時間以上で死亡リスク低下

歩行時間が長い人は健康意識が高い
歩行時間が長い人は健康意識が高い(提供写真)

「適度なウオーキングが健康長寿に良い」という話を聞くことがあります。実際のところ、どれほど影響があるものなのでしょうか。

 日本人高齢者を対象として、1日の歩行時間と死亡リスクの関係を調査した前向き観察研究(コホート研究)が、日本疫学会誌2015年11月号に掲載されています。

 研究開始時に64歳、または65歳だった1239人の男性が対象です。

 対象者を1日の歩行時間で「0.5時間未満」「0.5~1時間」「1~2時間」「2時間以上」の4グループに分類しています。0.5時間未満のグループを基準として、それぞれの歩行時間グループの死亡リスクについて、死亡するか、75歳になるまで追跡調査しました。なお、喫煙習慣、飲酒習慣、BMI、定期的な運動の有無、睡眠時間、高血圧や糖尿病といった病歴など、結果に影響を与えうる因子で補正しています。

 その結果、歩行時間が1日0・5時間未満のグループに比べて、1日2時間以上では死亡のリスクが48%低いことが示されました。ただし、1日2時間未満の各グループでは明確な差は見られませんでした。歩行時間が長い人は、健康意識が高く健康状態も良好であると考えられ、死亡リスクの低下は歩行時間だけが原因ではないかもしれません。

 心臓病やがんなどを有している人たちだけで解析すると、明確な関連性は認められませんでした。1日2時間以上のウオーキングをすれば長生きできると結論するのも短絡的かと思いますが、適度なウオーキングは、手軽にできることもあり、無理せず楽しみながら継続できるのであれば、健康的な一面もあるかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。