家計簿を見れば病気がわかる

電車か車通勤か 定期&ガソリン代から分かる糖尿病リスク

(C)日刊ゲンダイ
なぜ糖尿病に所得格差が生じるのか?

「低所得者ほど糖尿病のリスクが高い」という研究報告が、世界中でなされています。日本でも、2014年に「民医連」が発表した調査研究で、低所得者の糖尿病リスクは高所得者の1.5倍だと報告されています。

「なぜ糖尿病に所得格差が生じるのか」についてさまざまな説明が試みられていますが、まだ決定的な理由は見つかっていません。そこで今回は、所得と通勤定期代、ガソリン代の関係から、この問題に迫ってみたいと思います。

〈表1〉は、2人以上の勤労世帯の数字です。所得が上がるほど、通勤定期代が増える傾向がはっきりと読み取れます。高所得者は郊外の一戸建てに住み、都心のオフィスに通っている人が多いということでしょう。逆に、低所得者は職場に近い社宅等に住んでいるか、郊外の工場などにクルマ通勤する人が多いのかもしれません。

 最近の研究で、満員電車で通勤している人は、普段からよく歩いている人以上に血糖値が低いことが分かってきました。ジッとしているようでも筋肉を緊張させ、意外とカロリーを使っているからかもしれません。

 一方、ガソリン消費は所得に関係なく、ほぼ一定の傾向が読み取れます。つまり、所得によらず、同じ量だけガソリンを消費しているわけです。しかし一般に高所得層は燃費の悪い大きなクルマを購入しますから、低所得層よりも、クルマでの移動距離が少ないと言えそうです。クルマをよく使う人は、それだけ歩かないため、糖尿病リスクが高まります。

 以上まとめると、高所得者ほど電車通勤が多く、クルマ移動が相対的に少ないことから、低所得者と比べて糖尿病のリスクが低いと説明できそうです。

 一方、独身者の通勤定期代には、2人以上世帯のような明確な傾向は見られません(表2参照)。ただし年収600万円超の人の定期代は、群を抜いて多くなっています。ガソリン代は、年収によらずほぼ一定の金額を使っているように見えます。したがって、独身者では高所得の一部の人を除いて、糖尿病リスクは所得に関係しないと思われます。ただし、まだ確認されていない、あくまでも仮説の話です。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。