どうなる! 日本の医療

公的保険として認可 「3Dプリンター」で人工骨を作る時代

(C)日刊ゲンダイ

 これまで先進医療だった「3Dプリンターで作った臓器モデルを利用した手術支援」に保険点数がつくことになった。今月の中医協で認められた。今後は難しい手術前に、患者の臓器を3Dプリンターで作り、患者への説明や模擬手術に使われることになりそうだ。

 3Dプリンターとはコンピューター上で作った設計図をもとに、立体的なものを作り出す装置のこと。以前、これを使って殺傷能力のある銃器が作られた事件を覚えている人もいるだろう。

 その3Dプリンターによる臓器作りというとピンと来ない人もいるかもしれない。しかし、すでにさまざまなところで研究や臨床が行われていて、3Dプリンターは医療に大変革をもたらすといわれている。

 例えば、歯科医院では既に患者にピッタリと合う入れ歯やマウスピースなどの作製に使われているほか、海外では3Dプリンター形成の人工骨が承認されている。

 3Dプリンターで人工骨を作るには、患者のCTスキャン画像データから設計図を作成。それをもとにカルシウムの粒子の塊を削って人工骨を作る。

 これまでは患者自身の骨を取り出し、欠損部分に合う形になるよう削って移植してきた。これだと患者の負担が大きい。かといって、熱処理された素材を工作機器で削って作る従来のやり方では患者の骨とくっつきにくいという欠点がある。その点、3Dプリンターで作った人工骨なら患者への負担も少なく、骨がくっつきにくいという心配もない。

 また、ある大学では脳内の血管に瘤ができる脳動脈瘤の治療に3Dプリンターで作ったプラチナコイルを入れる研究が進められている。脳動脈瘤の治療法は、瘤の中に柔軟性のあるプラチナ製のコイルを詰めるやり方が一般的だ。コイルはカテーテルを太ももや腕などから瘤のある場所まで入れる。

 この方法なら、開頭手術が不要なため、患者負担が少ない。ただし、患者の瘤にピッタリ合うようコイルを調整するのが難しい。しかし、3Dプリンターならそれが可能で患者への負担が減るうえ、貴重なプラチナを無駄にすることがなくなるという。さらに、3Dプリンターを使うことでより安価で精緻な義足・義手も可能となる。

 再生医療よりも先に、まずは3Dプリンターによりカスタマイズされた人工臓器が医療を変えることになりそうだ。

村吉健

村吉健

地方紙新聞社記者を経てフリーに転身。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を築く。当初は主に政治分野の取材が多かったが歴代厚労相取材などを経て、医療分野にも造詣を深める。医療では個々の病気治療法や病院取材も数多く執筆しているが、それ以上に今の現代日本の医療制度問題や医療システム内の問題点などにも鋭く切り込む。現在、夕刊紙、週刊誌、月刊誌などで活躍中。