Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【西川きよしさんのケース】前立腺がん“治療しない”選択肢もある

西川きよし&ヘレン夫妻(C)日刊ゲンダイ

 西川さんは手術を受けることから、良性ではないのでしょうが、それでも切除すればまず治ります。患者数が急増している割に、死亡数が約1万2000人にとどまっていることからも、穏やかながんということが分かるでしょう。トップの肺がんの死亡数は約8万人。

 だからといって、油断できないのが、このがんの厄介なところ。

 前立腺がんの人が増える60代前後は、尿が出にくい、寝ているときに何度もトイレに起きる、我慢できずおもらしするといった前立腺肥大症の症状に悩む人が少なくありません。前立腺は尿道を取り囲む3~4センチの臓器で、そこにがんができると、前立腺肥大症と同じような症状が表れます。前立腺肥大症の人は日ごろから困っているがゆえ、がんを見過ごす恐れがあるのです。

■早期発見と過剰診療

 前立腺がんは早期なら無症状ですが、進行するにつれ、前述した症状が表れ、さらに近くの骨に転移すると腰痛などを起こします。症状を頼りにすると、発見されたときに進行していたということになりかねません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。