家計簿を見れば病気がわかる

教育格差は健康格差

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 この連載の最後のテーマとして、「教育への支出」を取り上げます。高所得世帯の子供ほど、教育に金をかけられるため、一流大学に進める可能性が高いといわれています。

 一流大学の出身者は、一流企業のサラリーマンや高級官僚、つまり将来の高所得者になりやすいというのは、よく知られた事実です。貧富の格差や社会的階級が固定する元凶ともいわれています。金持ちの子は金持ちに、貧乏人の子は貧乏人に……。この現象は日本だけでなく、世界中で進行しています。

 ところがそれだけでなく、健康格差も固定されつつあるのです。生活習慣病の罹患率は、高学歴者ほど低くなることが知られています。学歴が高いほど、健康と病気について知る機会が増えるため、食事と運動、喫煙や飲酒に対する意識が高まり、より健康的な人生を送れるというのです。

■子が親以上に健康に気をつかう

 高学歴者は高所得者になる可能性が高く、その子供も高学歴になる可能性が高いうえに、子供たちは親の健康な生活を見て成長しますから、親以上に健康に気をつかう習慣を身につけることになります。

「所得」「学歴」「健康」の3格差は、互いに深く関係し合いながら、次第にひとつに収斂していくのです。科学者の中には「将来の人類は、健康で知能の発達したエリート人類と、体と知能が弱い下級人類の2種類に分かれていく」という極端な説を唱える人もいるほどです。

 収入別の教育支出は、〈表〉のようになっています。年収300万円台の家庭は、まだ子供が小さいためもあってか教育支出は少なめです。ただ、年収500万円以上の家族構成はほぼ同じです。注目すべきは、塾・予備校への支出。やはり年収が高いほうが、教育への投資も多いのです。

 ところが、年収1500万円超の家庭が払っている授業料は、必ずしも多くありません。おそらく、子供が国公立大学に進学したかどうかの違いでしょう。年収1000万円台の家庭の子は一流国立大学には届かず、私立大学に進むケースが多いのかもしれません。

 格差があることは仕方がないとしても、それが固定してしまうのは決して好ましいことではありません。政治的、社会的な解決が強く望まれる問題です。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。