医者も知らない医学の新常識

がん検診は必ずしも長生きにつながらない

(C)日刊ゲンダイ

 世の中にはたくさんのがん検診があります。市区町村で無料で受けられるものもありますし、人間ドックなどで高額で提供されているものもあります。みなさんはがん検診にどのような効果を期待されているでしょうか?

「がんが早期発見されることにより、そのがんで死ぬことはなくなる」と思っている方が多いかもしれません。しかし、実際にはしっかりとした研究でがんによる死亡の減少が認められているのは、「CTによる肺がん検診」「便の検査や内視鏡による大腸がん検診」など、非常に少数のがん検診だけです。

 さらには、そうした効果が確認されている検診であっても、「その検診を受けることにより、受けない人より長生きができる」ということがしっかりと証明されているがん検診は、今のところひとつもないのです。

 がんによる死亡が減れば、寿命が延びるのが当然と思われますが、そうではありません。実はがん検診を受けることにより、無駄な検査や治療が行われたり、悪い病気と言われてストレスが増加したりして、それが別の病気の原因となることがあるので、結果として寿命が延びることはないのです。

「ならばもう検診はすべて受けるのをやめてしまえ」と思う方がいるかもしれません。しかし、それもまた賢いことではありません。たとえば、ヘビースモーカーだった方は、もちろん禁煙することが大前提ですが、CT検査による検診を受けることによって、おそらくは寿命を延ばす効果もあるのです。

 このように、個々の人の生命に影響を及ぼす病気はさまざまなので、そのリスクに応じた検査こそが理想のがん検診であるのかもしれません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。