脳を育てれば健康になれる

<第1回>決まった時間と場所での勉強は効率が悪い

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 最近、脳への関心が高まっている。書店でも脳科学の本が平積みされ、テレビの教養番組だけでなくバラエティー番組でも脳科学が取り上げられるようになってきた。

 その原因のひとつは「脳細胞は20代前半以降減少し続ける」という医学常識が脳科学の進歩で過去のものになったためだろう。

 いくつになっても、その人の行動や習慣によって脳が成長していくことが明らかになり、脳の使い方(考え方)次第で寿命が延びる可能性があることさえわかってきた。いまや、脳を健全に保つことは健康な生活に不可欠だ。

 では、健全な脳はどう育てていけばいいのか。まずは、世界中で研究が進む「科学的な勉強法」を通じて脳の効率的な動かし方について考えてみよう。

「勉強は決まった時間、決まった場所で、静かな環境の下、行うと良い」

 多くの人は家庭や学校でこう教え込まれたはずだ。テレビを見てケタケタ笑う弟、母親が包丁で野菜を切ったり、洗い物の音が流れる。そんな台所兼居間で勉強するなんてもってのほか。集中力を欠き、記憶力を低下させ、学習効率が低下すると考えがちだ。

 ところが、学習を研究する欧米の学者たちによると、「勉強をする時間も場所も変えた方が学習効率が高まる」のだという。東大在学中に国家公務員上級試験に合格。その後、医学部に入り直して医師免許を取得し、受験生専門外来のある「本郷赤門前クリニック」を営む吉田たかよし院長が言う。

■静かな自宅の部屋は勉強場所にふさわしくない

「集中力を高め、質の高い勉強をするには、静かな自宅の勉強部屋はもっともふさわしくない場所です。自宅はリラックスするにはいいが、副交感神経の作用でゆるゆるになって適度な緊張感が必要な勉強には逆効果。私は『回遊式勉強法』が最適と受験生に勧めています。つまり、図書館や喫茶店、さらには山手線の車内で勉強する。試験会場で緊張して集中できない受験生には、特に大きな効果があります」

 なぜ、刺激が多い場所で勉強することが学習効率を高めるのか? それは記憶のシステムから明らかだ。

 脳には本人の自覚よりはるかに多くの記憶が残されている。忘れたというのは多くがカン違いで、思い出す(検索する)能力が欠けているだけ。思い出すための脳への刺激が多ければ多いほど有利になる。多様な刺激を与えれば勉強の効率は上がるのだ。