医療数字のカラクリ

真実か都市伝説か…「新月の夜は犯罪が多い」の真偽

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 このことを病気の治療に当てはめてみましょう。たとえば「赤身の肉を多く食べる人はがんが多い」という研究結果は、「新月の夜に犯罪が多い」というのに対応しています。さらに「赤身の肉をやめるとがんが減るか」については、この結果からは全く何とも言えません。

 それなのに、「赤身の肉を多く食べる人はがんが多い」なんて聞くと、すぐに「赤身の肉をやめてがんを予防できる」などと思ってしまう人が多いのではないでしょうか。しかし、ことはそんなに単純ではないのです。

 実は、「天文犯罪医学」なんて雑誌はありません。私の創作です。しかし案外だまされた読者の方も多いのではないでしょうか。私はウソであることをバラしましたが、真実を伏せて延々ウソをつき続けている人たちも多いのです。気を付けましょう。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。