天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

高額な心臓手術 過剰な治療を避けるには“見積もり”を取る

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 交換する弁が1個と3個では、30万円近い差があります。悪徳な病院は、こうした差額に目をつけて悪用しているのです。本来なら1個だけ弁を交換すれば問題ない患者さんに対し、他の健康な弁にも「検査で異常が見つかった」と説明して“偽病名”を付け、残りの2個の弁も交換するような医療行為です。そうすれば、1人の患者さんにつき30万円ずつ多く診療報酬を請求できます。

 これを5人に繰り返せば、150万円になるわけです。

 手術が行われる前には、どこにどれだけの費用がかかるのかを細かく記載した「レセプト」(診療報酬明細書)が作成されます。患者さんにもレセプトをお渡しして手術の説明をします。

 保険機関は、このレセプトを確認して病院の不正請求をチェックしていますが、基本的には「レセプトの病名は正しい」という前提に立っています。そのため、病院側が本来なら問題ないくらい小さな異常を検査で見つけ出し、それに病名を付けてしまえば、すんなり通ってしまうのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。