天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

高額な心臓手術 過剰な治療を避けるには“見積もり”を取る

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 2009年、患者に不要な手術を行って死亡させてしまった奈良の山本病院は、他にも必要のない検査や治療を繰り返して不正請求を重ねていました。経営が苦しい民間病院の中には、この手の不正請求をいまだに行っているケースがあるのです。

 こうしたいい加減な病院に騙されないようにするには、まず病院に「手術や治療の費用はどれくらいかかるのか」をたずねて“見積もり”を取ってください。信頼できる病院なら、本人が加入している公的保険の種類や、加入している民間保険などを考慮して治療費の概算を出してくれます。

 見積もりを取るだけで、その後は治療を受けなくても問題ありません。出してもらった概算をチェックして、疑問があれば質問する。それで不審な点があるようなら、別の病院でセカンドオピニオンを受ければいいのです。

 また、通常なら問題ない初期の病変が検査で見つかって、「手術しないと危ない」などと騙されてしまう患者さんは、金銭的に余裕がある人が多いといえます。それなりの検査費用がかかるのに、早い段階で病院に行くということは、それだけ経済的に恵まれた環境にいるということでもあります。そういう患者さんは、高額な手術を勧められてもすんなり支払える場合が多いので、目を付けられやすいのです。もちろん、多くは信頼できる医師や病院といえるでしょう。ただ、中には患者を騙そうとする病院もあるという現状を知っておくことは、自分の身を守ることにつながります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。