早期がん発見容易 最新機器「NBI内視鏡システム」の実力

元気でも安心できない(写真はイメージ)
元気でも安心できない(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

「早期がんの発見」を最大の目的とする最新の内視鏡機器「NBI内視鏡システム」が注目されている。対象は、咽頭・喉頭がん、食道がん、胃がん、大腸がん。5年前から導入している「方南みどりクリニック」(東京・杉並区)の谷口将太郎院長に話を聞いた。

■粘膜の表面構造や毛細血管がクッキリ

 NBI内視鏡システムの「NBI」は、「Narrow Band Imaging」の略。日本語に訳すと「狭帯域光観察」となる。

「2つの短い波長の光を粘膜に当てることで、通常の内視鏡検査では分かりにくい粘膜の表面構造や毛細血管をはっきりと映し出すことができます。がんがある部分は、粘膜の表面構造や毛細血管が正常部分(がんでない部分)とは異なっているので、がんが浮かび上がって見えるのです」

 これまでの方法では見落とされていたかもしれない微細な変化、つまり早期がんをNBI内視鏡システムでは発見できるのだ。

 さらに、2つの短い波長の光に加え、緻密な観察を可能にする拡大内視鏡も搭載している。これによって、病変を70~80倍に拡大し、観察することができる。

「咽頭・喉頭がん、食道がん、胃がん、大腸がんのうち、胃がんと大腸がんは、拡大内視鏡を備えたNBI内視鏡システムで調べることで、良性か悪性か、さらに粘膜内のどこまでがんが浸潤しているかが分かります」

 リンパ節転移のない早期胃がんは、胃の表層を切除するだけの内視鏡手術で根治効果が得られる。大腸がんも、リンパ節転移がなく、粘膜下層の浅層までにとどまっていれば、内視鏡手術が可能だ。言い換えれば、これらの条件に該当しない場合は内視鏡手術では不十分で、外科手術が必要になる。

「拡大内視鏡搭載のNBI内視鏡システムであれば、この判断をより正確に行えます。従来の内視鏡では、そこまで正確には判断できませんでした。『良性腫瘍だと判断し、放っておいたが、実は悪性のがんだった』『取りきったつもりが、がんが見落とされていて取り残しがあった』あるいは『必要以上の切除だった』というケースがあったのです」

 複数の医療機関から、「通常の内視鏡では発見が難しかったがんをNBI内視鏡システムで確認できた」という論文が発表されているという。別の施設の試験では、従来の内視鏡検査による咽頭・喉頭がんの早期発見率が8%に対し、NBI内視鏡システムでは100%。食道がんでは、従来検査55%に対しNBI内視鏡システム99%という歴然とした差が出ている。

 しかし、拡大内視鏡が搭載されていることで、内視鏡の直径が大きくなる。拡大内視鏡は直径約10ミリ、ごく細いものでは直径約5ミリ程度なので、2倍大きい。

「当院では検査時に静脈注射で鎮静剤を投与するので、内視鏡の直径が大きくなっても、患者さんのつらさが増すわけではありません。鎮静剤でほぼ眠っている間に検査が終了します。鎮静剤の量もそれほど多くありませんから、高齢者でも検査後はすぐに起き上がって帰ることができます。車の運転だけは控えてもらっています」

 NBI内視鏡システムそのものは取り入れている医療機関が増えているが、拡大内視鏡まで搭載しているかとなると、大学病院など大規模な医療機関がメーンになる。

 検診として受けるなら自費だが、症状があって受ける場合は、通常の内視鏡検査と同様に保険適用になる。

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