脳を育てれば健康になれる

落ち着きのない子供の方が集中力が高い? ADHDの可能性

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 人間は「活発に動く」ほうが脳に刺激を受け、より脳が発達する。逆にジッとしていると、健全な脳の発達はのぞめない。大昔のローマ人は「健全な精神は健全な身体に宿る」と言ったが、最近の研究では、「適度な有酸素運動」が「健全な脳をつくる」ことが明らかになりつつある。

 そのひとつがアイルランド・ダブリン大学の研究チームが行った研究だ。普段、運動とは無縁の学生に他人の顔写真と名前のセットをスライドで見せ、その後、顔写真だけを見せて名前を当てさせるテストを行った。さらにその後、被験者の半分を30分間エアロバイクに乗せ、残り半分は休息させて再び同じテストを行ったところ、エアロバイク組のほうは成績がアップし、休憩組は変わらなかった。

 興味深いことに、エアロバイク組の血液中には神経細胞(シナプス)の機能向上に欠かせない「BDNF」という脳で生成されるタンパク質の一種の成分の値が著しく増えていたという。

 そういう意味では子供が「落ち着きのない」のは自然なことで、それは「脳が発達している過程である」ことの証しといえる。

 では、過度に動き回る子供、つまり「落ち着きのない子」(=ADHD、注意欠陥多動性障害)には当てはまるのか。

「一口にADHDといっても種類はさまざまで、症状が重ければ薬の服用が必要になる場合もあります。しかし、偏差値の高い有名中学や東大に合格する人も驚くほど多く、私は大切な個性として受け止めるべきだと指導しています。おとなしく授業を受けるのは苦手ですが、興味を持ったことにはものすごい集中力を発揮し、超難問を苦もなく解いていく子供もいます」(本郷赤門前クリニック・吉田たかよし院長)

 吉田院長に言わせると、坂本龍馬や松下幸之助など歴史に名を残す人の中にはADHDの症状を持つ人が多いという。ほかにもエジソン、リンカーン、チャーチル、アインシュタイン、クリントン大統領など錚々たる天才や偉人にもその傾向が見られるという。

 ADHD的な人が学ぶ際にはどのような点に注意すればいいのか。

「ケアレスミスが多いので、試験中は問題文に指をさして確認するなど、ムダな失点を抑える最低限の対策は不可欠です。しかし、それ以外は型にハマった勉強のスタイルを押し付けないこと。歩き回りながら勉強したり、椅子の上に体育座りをしても認めてあげることです」

 ADHDに多いといわれる「集中力のなさ」は、裏を返せば「ひらめき」「創造性」につながる。「多動性」はエネルギッシュと行動力につながるのだ。