見逃される高齢者の「うつ病」は認知症の誤診が招く

本当はうつ病かも…(C)日刊ゲンダイ

 前出の「物事を覚えられなくなった」「変な行動・言動が目立つようになった」という症状なら、認知症専門医以外でもある程度は正しい診断ができる。しかし「ぼーっとするようになった」は、認知症とうつ病の見極めが難しい。日本認知症学会のホームページなどで専門医を探し、そちらを受診すべきだろう。

 そもそも、認知症であっても、初期ではうつ症状が見られることがある。

 認知症の母親を撮ったドキュメンタリー映画「毎日がアルツハイマー」の関口祐加監督は、介護に関わるさまざまな人が集い意見を交わす「かいご楽快」で、「母親が認知症と診断された最初の2年半、家に閉じこもった」と話している。後に専門医から「初期はまだらぼけ。自分に起きていることが分かる。お母さんはそれに戸惑い、苦しんでいるのだ」と指摘され、母親の行動の意味を理解できたという。

 医師も家族も「年を取っているから、認知症という診断は間違いないだろう」と思いがちだ。しかし本当にそれは正しいのか? 認知症によるまだらぼけに苦しんでいるのか? あるいは、うつ病なのか? しっかり見極めるために協力できるのは家族しかいない。

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