脳を育てれば健康になれる

一夜漬けよりも効果的 「分散学習」で記憶する脳のシステム

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「一夜漬けでいっぺんに知識を詰め込むより、今日少し勉強して明日また少し勉強するほうがいいんじゃないの?」

 学生時代に母親にそういわれてカチンときた人も多いだろう。「勉強の仕方なんてわからないくせに……」とついつい毒づきたくなるが、実はこれ、ある意味、真実を言い当てている。

 実際、一夜漬けで知識を詰め込むと、テキストを見たときに「ああ、これは見たことがある」という親しみがわく。しかし、そのことと、素早く思い出すことは別物だ。

 では、効率良く記憶するにはどのような勉強法がいいのだろうか。

 そのヒントになるのが、ピョートル・ウォズニアックという人物が「英語の単語を記憶するために、どのような間隔で勉強、復習すればいいか」を研究した結果だ。

 それによると、最初に勉強した1、2日後に復習し、さらに1週間後、1カ月後に復習すれば、記憶はより長くとどまるという。少しずつ勉強して、忘れかけたときに復習を繰り返す。これは分散学習法と呼ばれる方法で、その後もさまざまな研究が行われている。心療内科医師で「本郷赤門前クリニック」の吉田たかよし院長が言う。

「分散学習法は進学校などで昔から行われている方法で、効果があることはすでに証明されています。私が通っていた灘中、灘高でもそうした指導を行っていました」

 分散学習が優れているのは記憶が長期間定着するということ。なぜか。

「一度覚えた知識は脳の海馬に仮置きされ、そのまま放置すると長くて4週間で消えてしまいます。この知識を寝ている間に大脳新皮質に移し替えることで、安定した知識になるのです。だから、睡眠時間を削って覚えたものは泡のように消えてしまうのです」(吉田氏)

 脳は筋肉と同じで、長時間、同じ部位を使用していると神経の疲労を引き起こす。これを防ぎ、毎晩、知識を少しずつ大脳新皮質に移し替えていく「分散」方式のほうがはるかに記憶効率が高まるというわけだ。睡眠時間は7時間半が理想、4時間など論外だという。

 では、どのタイミングで復習するのがいいのだろうか。それは科目や内容で異なるという。

 ベストタイミングは半分忘れかけた時。科目によって、翌日の場合もあるし半日後もある。人は新しい参考書を次々と購入するなど何かと新しい勉強をしたがるが、吉田氏に言わせると大切なのは「復習」だという。たっぷりの睡眠時間と復習。これでテストの点数は倍増するという。