インフル大流行で期待外れ露呈 「4価ワクチン」は効かない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「先生、今年のインフルエンザワクチンは値段が5割増しになったぶん、効くというからお願いしたのにインフルエンザにかかっちゃったじゃないですか!」

 受験生を持つ母親の金切り声が診察室に響き渡る。インフルエンザの流行期を迎え、複数の医療機関で患者からこんな“クレーム”が上がっているという。

■費用は5割増しだが…

「ワクチンを打ったのにインフルエンザにかかり、症状も打たなかったときと変わりない。期待外れだった。そういう声は例年になく多いです」

 こう苦笑するのは「北品川藤クリニック」(東京・品川区)の石原藤樹院長だ。「インフルエンザワクチンを注射すると絶対にインフルエンザにならない」というのは世間の大きな誤解だ。しかし、患者数も減らず、症状も軽くならないとしたら、期待外れと言われても仕方がない。とくに今シーズンのインフルエンザワクチンは日本初の「4価ワクチン」が使用され、これまでよりも“効く”と期待されていたからだ。

「『価』というのは、ワクチンを使うことで何種類のウイルスや細菌に対して免疫を獲得できるかを示す言葉です。これまで日本ではA型2種類、B型1種類の『3価ワクチン』しか認められていませんでしたが、今シーズンからA型2種類、B型2種類の『4価ワクチン』が認められました。ワクチンを打つと、免疫を獲得する種類のウイルスや細菌が1つ増えるのですから、期待されたのは当然です」(都内の内科医)

 4価ワクチンはWHO(世界保健機関)が推奨しており、米国で昨年有効性が実証された。期待を含めて、費用を5割増しとした医療機関が多かった。

 ところが、厚労省が今月5日発表した1月最終週の全国約5000カ所の定点観測医療機関から報告された患者数を見ると、昨年同期よりも患者数が増えているところが多い。

 たとえば東京都1万782人(昨年同期7835人)、神奈川県1万726人(同7813人)、埼玉県7605人(同4962人)、大阪府6223人(同6174人)。今年は暖冬でインフルエンザの流行期が遅れているとはいえ、現在のところ、その勢いは例年と変わらないように見える。

「インフルエンザワクチンは昨年流行したインフルエンザウイルスをもとに、今年の流行を予想して作ります。現在、流行しているのは、09年に広まった新型インフルエンザと同じタイプ。あとはB型と抗原変異した香港A型です。もともと今年は新型インフルエンザタイプの大流行は予想していなかったようです。香港A型の予想が当たっていても、いまのように抗原変異したものには効き目が薄い。B型はそもそもワクチンが効きづらい。つまり、予想が外れたことがワクチンが効かないという声の原因でしょう」(石原院長)

 そもそも、日本のインフルエンザワクチンは効きにくいように作られているという。

「日本のインフルエンザワクチンはスプリットワクチンと言って、発育鶏卵で増殖させたウイルスの粒子をバラバラにして、液体に溶かして注射します。昔は全粒子型という、もっと強力なワクチンが使われていたのですが、副作用が強いため使われなくなったのです。外国では免疫増強剤を使用したワクチンや点鼻のワクチンも使用されていますが、日本ではまだ使われていません。そうした意味で、日本のインフルエンザワクチンは海外のものより効果が劣るのです」(石原院長)

“高価なワクチン”を打ったからといって、安心してはいけないということだ。

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