普段は元気なのに、仕事や勉強など嫌なことを強いられると途端に「うつ状態」になる。いわゆる「新型うつ」は「単なる怠け者病」と見られることも多いが、受験生の中にはそうした症状を持つケースが多い。しかし、受験生の「新型うつ」は「受験うつ」というべきもので、放っておくとその後「真性うつ」に移行しかねないから厄介だ。
「受験うつ」(光文社新書)の著者で「本郷赤門前クリニック」の吉田たかよし院長が言う。
「子供は友達と取っ組み合いのケンカをしたり、悩みを打ち明けたり、五感をフルに使ったコミュニケーションによって成長していきます。ところが、最近はこのコミュニケーション能力が退化している。これが新型うつ=受験うつの原因です」
■「希薄な人間関係」と「間違った勉強法」
吉田院長に言わせると、コミュニケーション「退化」の大きなベース要因は、急速に普及しているインターネット、スマホ、ゲームなど。人とのかかわりなしでも長時間過ごせるツールが急激に発展したためだという。
加えて「間違った勉強法」=「間違った脳の使い方」が原因になるという。
「受験に成功するためには何でもする。ロボットのように機械的に暗記し、無理やり詰め込んで合格を勝ち取る。中学受験に成功して一見、受験うつとは無縁に見える子供が、6年後の大学受験時に突然、『受験うつ』となって表れるケースも少なくありません」
勉強に手が付かない。焦るばかりでノイローゼになる。模擬試験会場でドキドキして頭がボーッとする。夜眠れない。食欲がない……。最悪、衝動的自殺に走っても不思議ではない状態にまで追い込まれる。こうなると、今すぐに治療が必要となる本格的なうつ病だ。
■体を動かして心身のバランスを整える
これを脱する方法として、吉田院長はまず運動をすすめるという。ジョギング、ウオーキング、ラジオ体操など軽めの運動から徐々にアクションを強くする。
「運動の意欲までなくし、結果、抗うつ薬に頼ろうとする人も少なくありません。しかし効果が出ていない場合が多く、副作用も考えれば慎重になるべきです。私がすすめるのは、頭の外から磁気のパルスを当て脳を刺激する磁気刺激治療TMSです」
08年に米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けた最新療法で、日本では保険診療は認められていないが、専門の診療所で「受験うつ」にも効果を挙げているという。
脳を育てれば健康になれる