Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【胃がん】ピロリ除菌と胃カメラで予防&早期発見

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 武藤先生は、昭和天皇のすい臓がんの手術を担当。日本を代表する外科医の先生が、胃カメラ検査の必要性を明言しているのです。

 胃がんの患者数は約13万3000人、5万人近くがこのがんで命を落としています。胃がんの人は、9割以上がピロリ菌に感染。感染と塩分過多の食事や喫煙などによって胃の粘膜に炎症が生じ、やがてがんになります。

 ピロリ菌感染者が胃がんになる頻度は100人に1人ですが、胃がん発生の上流にあるピロリ菌感染が冷蔵庫の普及などによって減っていますから、胃がん患者は今後、大きく減るでしょう。胃がん撲滅の上で大切なのがピロリ菌対策で、それと対をなすのが定期的な胃カメラ検査なのです。

 元フジテレビアナの逸見政孝さん(顔写真)は1993年、48歳の若さで亡くなりました。告知会見は印象的でしたが、彼の命を奪ったのが胃がんの中でも悪性度の高いスキルス性胃がんです。このがんはピロリ菌との関係が薄い上、バリウム検査では見つけにくい。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。