脳を育てれば健康になれる

オンオフの切り替えで活性化 ボーッとする時間が天才を生む

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
ジョブズはどんなに多忙であっても、ボーッとする時間を大切にしていた

 小さいころ、親から「ほら! ボーッとしてないでシャキッとしなさい」などと注意された経験はないだろうか。この「ボーッとする」ことは、脳にとってどんな意味を持つのか。実は最新の脳科学では「ボーッとする時間は脳の発育に不可欠」という実験結果が次々と発表されているというから驚きだ。

 ワシントン大学のレイクル教授は2001年、脳内の後部帯状回と前頭葉内側と呼ばれる部分が認知作業を停止している、いわゆる「ボーッとしている」ときに、突然、連動して活発に動きはじめる現象を発見。この2つの領域は脳内でも離れた位置にありながらシンクロしており、重要な役割を果たしていると考えられている。心療内科医で「本郷赤門前クリニック」院長の吉田たかよし氏がこう解説する。

「脳がボーッとしているときに活発化する現象は『デフォルト・モード・ネットワーク』と呼ばれ、今、世界中の脳科学者が研究に乗り出しています。少なくとも記憶や感情の整理、創造力など、さまざまな脳機能に重大な役割を果たしているのは間違いありません。また、うつ病や統合失調症、アルツハイマー病などの、脳機能にかかわる病気では、大半に『デフォルト・モード・ネットワーク』の異常が見つかっており、いかに、この機能が大切かが分かります」

 21世紀最大の創造的企業として、全世界から高い注目を集めているアップル社。その創業者のスティーブ・ジョブズは、どんなに多忙であってもボーッとする時間をとても大切にしていたという。その時間帯に「デフォルト・モード・ネットワーク」が活発化して、画期的なアップル商品のヒントを得ていた可能性が指摘されている。

 こうしたことから、アメリカでは、これまで時間を効率的に素早く使うことだけを重視してきた考え方を根本的に見直し、「画期的なビジネスを生み出したり、子どもを第2のジョブズに育てたければ、ボーッとする時間を確保してあげるべき」という論まで巻き起こっているという。

「ただし、これは勉強中にボーッとしていいということではありません。集中するときは集中し、休憩時にはボーッとするという“オンとオフの明確な切り替え”が脳機能を高めてくれます」

 ボーッとするには工夫が必要だ。吉田院長は、「休憩中に窓の外の景色を見るだけでも効果があり、実際に成績がアップしている」という。脳機能を高めるには上手な休息が必要なのだ。