過剰摂取は健康に悪影響 「ビタミンD」はどう取るべきか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 近年、「ビタミンD」がクローズアップされている。もともと骨や歯をつくるのに重要なビタミンといわれていたことに加え、このところさまざまな健康効果が報告されている。必要不可欠なビタミンであることは間違いないが、だからといってむやみに摂取するのは避けたほうがいい。

 ビタミンDには、「D2」と「D3」があり、どちらも役割は変わらない。D2は干ししいたけ、きくらげなどのキノコ類に豊富で、D3はサケ、サンマ、マグロなどの魚に多く含まれている。また、人間が日光を浴びることによって体内でも合成される。

 最近は、普段から魚を食べる機会が減っている人が多いうえ、冬は日照時間が短くなるためビタミンDが不足しがちになる。だから、健康のためにも積極的に摂取すべし……といったアナウンスをよく耳にするようになった。たしかに、ビタミンDにはさまざまな健康効果が報告されている。よく知られているのは「骨の健康維持」に関わる役割だ。ビタミンDは腸内で骨の形成に必要なカルシウムの体内吸収を高めたり、尿に排泄されるカルシウムを腎臓で再吸収してもう一度利用する働きがある。骨粗しょう症や骨軟化症の予防には欠かせない栄養素で、厚労省は成人のビタミンD摂取目安量を5・5μg/日に設定している。

 他にも、血液中のビタミンD濃度が低い人は、「心筋梗塞などの心疾患を発症するリスクが高い」「2型糖尿病の発症率がアップ」「うつ病の発症リスクが上昇する」といった研究報告がある。また、ビタミンDの不足は、がん、呼吸器疾患、自己免疫疾患などとも強く関係しているともいわれている。ビタミンDは、健康にとって重要なビタミンなのは間違いない。

■肝臓に蓄積

 しかし、だからといってビタミンDを必死になって摂取するのは大間違いだ。県立広島大名誉教授で、東北女子大教授の加藤秀夫氏(時間栄養学)は言う。

「ビタミンDは水に溶けない脂溶性のビタミンなので、尿では体外に排出されません。そのため、過剰に摂取すると肝臓に蓄積して悪影響を与える可能性があります。また、ビタミンDは血液中のカルシウム濃度を一定に保つ働きがある。ビタミンDだけが過剰になってカルシウムが足りていないと、骨を溶かしてカルシウムを動員し、濃度を一定に保とうとします。これが長期間続くと、骨が強くなるどころかスカスカになってしまうのです」

 ビタミンDの過剰摂取によって血液中のカルシウム濃度が上昇すると、心臓、肺、胃、腎臓、血管、筋肉などに、カルシウムが沈着しやすくなる。腎臓に付着すると石灰化して腎結石ができてしまったり、腎機能が障害を起こし、腎不全になるケースもある。腎臓に蓄積したカルシウムの影響で血液の濾過ができなくなり、尿毒症を招いて命に関わることもある。

 そこまで重症化していない場合でも、食欲不振、吐き気、下痢、便秘、脱水症、高血圧、不眠などの症状が表れる。取り過ぎは禁物だ。

「ビタミンDは、午前中に20分ほど日光を浴びるだけで必要な量が体内でつくられます。これに、毎日ではなくてもいいので、サケやサンマなどの魚、天日干ししたしいたけやきくらげを意識して食べ、一緒にカルシウムを含んだ大豆製品やゴマなどを取れば十分です。過剰摂取のリスクを考えると、サプリメントを飲んでまで補給する必要はないでしょう」

 厚労省が発表している成人のビタミンDの摂取量の上限は1日50μg。紅ザケは100g当たり33μg、サンマは同19μg、干ししいたけは同16.8μg、乾燥きくらげには同435μgのビタミンDが含まれている。

 食事と散歩だけで問題ないのだ。

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