天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

予防のため血縁に心臓疾患がいるかを確認

順天堂大医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 まずは、自分の両親や祖父母といった近い家族に心臓疾患で亡くなった人や、心臓手術を受けた人がいないかどうかをチェックしてみてください。同胞に2人以上の突然死があるようならば遺伝性の心臓疾患が濃厚なので、動脈硬化予防以前の迅速な対処が必要です。また、両親がともに心臓疾患の人は、そうでない人に比べて2倍も心臓疾患を発症しやすいという研究報告もあります。世代を経るごとに心臓疾患のリスク因子は濃くなっていくと考えていいでしょう。

 もし、血縁に心臓疾患で治療を継続している人がいた場合、次は「その心臓疾患を招いた原因はなんだったのか」を確認します。高血圧だったのか、糖尿病だったのか、高コレステロールだったのか。いずれも動脈硬化を促進して心臓疾患を招きます。

 原因がわかったら、今度は「その原因に対してどんな検査を受ければ経過を観察できるか」を調べましょう。血液検査、レントゲン検査、心臓超音波検査(心エコー)など、自分が抱えているリスク因子を観察するのにいちばん適している検査を探します。さらに、検査を受ける頻度は1年に1回でいいのか、半年で1回にするのかを考えます。検査してもらう担当医と相談してください。そうした信頼性が高い検査を定期的に受けながら、動脈硬化の原因になる症状の進行を遅らせる手だてはないかどうかを考えます。たとえば、高血圧による動脈硬化が原因で起こる心臓疾患なら、血圧を下げておけば進みません。高コレステロールも高血糖も同様です。生活習慣の見直しだけでいいのか、薬を飲んで下げておいた方がいいのか、それぞれ対処法を実施してください。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。