Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【渡辺謙さんのケース】白血病治療が新たな胃がん“誘発”か

 ですから、早期治療がとにかく大事で、渡辺さんはそうやってこの病気を克服されたのです。しかしその治療法により、胃がんが誘発された可能性もゼロではないと思われます。

 この病気の治療は、抗がん剤と放射線、幹細胞の移植、ほかの薬物療法の4つがあります。そのうち抗がん剤と放射線が2大治療。どちらも治療後に新たながんを誘発するリスクが知られているのです。

 渡辺さんがどの治療を受けたのか、明らかではありませんが、抗がん剤はどんなケースであれ必ず使われます。ですから、抗がん剤による新たながんの誘発が無視できないのです。

■定期検査は不可欠

 急性骨髄性白血病の治療に使われる抗がん剤は、異常な白血病細胞を抑えるのが狙いですが、正常細胞も少なからず影響を受けます。その結果、5%の頻度で数年後にがんが誘発される可能性があるとされます。そんなリスクがあるため、治療前の説明では「治療後も人間ドックなどで定期的に検査を受けて下さい」と説明されることがあるのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。