薬に頼らないこころの健康法Q&A

理系科目に興味が持てない… 医学部志望を変更すべきか

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 医学部の場合、理系の教科を必要順に列挙すると、「生物」→「化学」→「物理」→「数学」になります。前者2科目はともかく、後者2科目の必要性はかなり低いといえます。数学に至っては、医学部より経済学部の方がよほど使います。

 その一方で、医学部では英語力は必須です。高校英語のような文学的な文章を読解する必要はありませんが、英語の医学論文を大量に読みこなす力は必要になります。読むだけでなく、書く力、話す力すらいずれは求められます。

 また、国語力も大いに求められます。それも大量の医学情報の中から、今すぐに必要な知識をピンポイントで探し出すスキルが重要で、これは来る日も来る日も教科書や論文を大量に読むことで自然と鍛えられていきます。そうして得られた情報を論理の明快な文章にまとめる作文力も求められます。

 こういう事情ですから、昨今の医学部入試は英語と小論文に力を入れるようになりました。君の英語、国語のセンスは、医学部入試にあっては強力な武器となるはずです。親御さんが止めたのは、文学や哲学を専攻すれば、才能と運だけで生きていく人生になる。それより、安定した医師の仕事を選んでくれないか、ということだったのだと思います。しかし、君は安定よりやりがいを選びたいのだと思います。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。