大動脈の直径は胸部で約3センチ、腹部で2センチ。
「2倍以上の大きさになると破裂のリスクが高いので手術の対象です。それより小さければ経過観察になります。血圧が上昇すると大動脈瘤が大きくなるので、血圧を120以下に下げながら見ていきます」
残念ながら大動脈瘤を縮小させる薬はない。
【治療で重要なポイント】
大動脈瘤の治療には、血管にカテーテル(細い管)を挿入して人工血管を患部に装着する「ステントグラフト内挿術」と、外科手術で人工血管を縫いつけて埋め込む「人工血管置換術」がある。
後者で、渡邊総長が実施しているのが「体温を32度に保ち手術を行う方法」だ。
「人工血管置換術では、体温を低く下げた方が脳梗塞などの合併症を起こしにくいと考えられ、かつては20度程度、最近では25~28度に保つのが主流です。しかしそこまで体温を低くすると、脳の血管が縮んで脳梗塞を起こしやすいという研究報告があり、最も安全に手術が行える体温として、私は32度に保っているのです」