がん保険 本当に必要ですか

<2>がん治療の窓口負担額がアップしている理由

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 健康保険の中に、こうした仕組みが組み込まれているため、がんの医療費は意外なほど少なく抑えられているのです。

 これまで「民間のがん保険は不要である」とする意見の最大のよりどころが、この制度でした。がん治療に要する医療費が、100万円程度とするならば、貯蓄で十分賄えるはず。わざわざ高い保険料を払う必要はない、というわけです。

■がん医療費の高騰が限度額引き上げに影響

 しかし、近年の高齢化に伴う国民医療費の膨張によって、保険制度そのものが存続の危機にさらされつつあります。実は2014年12月以前は、限度額がもっと低かったため、患者負担は今よりも軽かったのです。それが、15年1月から現在の額に改定されました。冒頭に述べたがんの医療費の平均額は、それ以前の研究によるものです。いま調査を行えば、おそらく5%ほど金額が増えているはずです。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。