痛みなく下剤不要 大腸内視鏡検査は“水浸法”で楽チンに

眠っている間に終了
眠っている間に終了(C)日刊ゲンダイ

 大腸内視鏡は痛いから嫌だというみなさんに朗報だ。全く痛くない検査方法があるという。方南みどりクリニック(東京・杉並区)の谷口将太郎院長に聞いた。

■水で腸を膨らませる

「大げさではなく、『痛い』と言って帰る患者さんは100%いません」

 こう淡々と語る谷口院長は、「水浸法」という方法を取り入れた大腸内視鏡の検査を行っている。

 従来の大腸内視鏡は、大量に空気を入れて腸を膨らませ、その中にスコープを入れていく。腸は長く、屈曲している。その中をスコープを押し進めていくので、特にスコープを押した時に屈曲している腸がひっぱられ、痛みを感じる。

 一方、水浸法は空気の代わりに水を入れる。

「それによって腸が直線化し、スコープをスムーズに挿入できます。大腸が伸ばされる時の痛みを抑え、腸に穴が開くなどの合併症も起こしにくくなるのです」

 さらに、谷口院長は痛みをもっと減らすため、静脈注射で鎮静剤を投与する。

「寝ている間に終わってしまった」という患者がほとんどだ。鎮静剤の量は多くないので、高齢者でも検査後すぐに立ち上がり、歩いて帰ることができる。

 水浸法は、大腸内視鏡医の後藤利夫医師が東大病院在籍中に開発した方法で、数は多くないものの、実施している医療機関はいくつもあるという。

 大腸内視鏡を経験したことがある人は、痛みに加え、大量の下剤を飲まなくてはならないことにへきえきした経験を持っているだろう。

「従来の大腸内視鏡検査では、胃腸に残っている内容物を洗い流す前処置が必要で、2リットルもの下剤を飲まなくてはなりませんでした。本当につらいですし、高齢者には2リットルの下剤を飲むことができないために大腸内視鏡検査を諦めている人もいらっしゃいました」

 しかし、最近注目されている「内視鏡的洗浄液注入法」なら、自分で下剤を飲まなくてもいい。

「簡単にいえば、胃カメラを通して下剤を小腸と胃の中に注入する方法です」

 つまり、口から入れる胃カメラとお尻から入れる大腸内視鏡をその日のうちに受ける形になる。

「最初に胃カメラの検査を受けてもらいます。胃がんなどの異常を調べつつ、下剤も入れる。下剤は注入後約1時間で排便が始まり、2~3時間で止まって前処置が完了するので、そこから大腸内視鏡の検査を受けてもらう形になります」

 胃カメラを入れる時は、大腸内視鏡の時と同様に鎮静剤を投与するので苦しさはない。

 胃カメラと大腸内視鏡の2つを受けることにちゅうちょする人もいるだろう。しかし、大腸がんのリスクが高くなる40代以上は、胃がんのリスクが高くなる年代でもある。そして、大腸がん、胃がんどちらも、日本人に多いがんだ。せっかく大腸内視鏡を受けるのだから、一緒に胃がんのチェックもしつつ、下剤を飲む苦しみからも解放される……と考えれば、「そういう手もある」と納得できるだろう。

「『つらい』という感覚は、本当にその検査が必要な時も『検査を避けよう』『後回しにしよう』という行動に走らせてしまいます。それが重大病の早期発見を逃すことにつながりかねないのです」

 楽な方法があるなら、それを選択するのもアリだ。

■保険の対象は

 大腸カプセル内視鏡も保険適用になっているが、対象は「大腸内視鏡検査を受けたが、内視鏡が大腸の奥まで入らなかった人」、あるいは「大腸内視鏡が大腸の奥まで入らないだろうと考えられる人」。また、悪性ポリープが見つかっても、切除ができないので改めて大腸内視鏡を受けなくてはならない。

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