何かの病気で治療を始めるときに、誰もが「自分にとって最善の治療を選びたい」と思うでしょう。では、それをどのように見つけたらいいのでしょうか。
体験談をもとに考えるというのは一つの方法ですが、前回、取り上げたように誰かの体験談はそもそも怪しい。また、その体験談が本当で、その人が良くなっているとしても、その治療が自分にとっても最善の治療というわけではありません。
この状況を少し冷静に考えてみましょう。他人にとって最善の治療が自分にとって最善かどうか分からないということは、自分にとっての最善の治療は他人で確かめることはできず、「自分で確かめるしかない」ということです。それを確実に確かめるためには、自分が2人以上というより、たくさん必要になります。何人もの別の自分でいろいろな治療法を試して、有効かどうか吟味して、その中で最も有効な治療を本当の自分に行うというような方法が最善なわけです。しかし、現実には自分は1人しかいません。そんな方法は不可能なのです。
そうなると、次に考えるのは「自分によく似た人でどうか確かめてみる」という方法です。少なくとも同じ病気の同じ状況の患者でどうか? がスタートです。自分自身が進行肺がんであるとすれば、進行肺がん患者で効果を確かめられた治療を、まず自分にもやってみようということになるわけです。
自分にとって最善の治療を考えるとき、本当は自分自身で効果を確かめたいのだけど、それはできないので仕方なく自分によく似た患者で効果を確かめ、それを参考にする。これが、治療の効果を考えるときのスタート地点なのです。
医療数字のカラクリ