がん保険 本当に必要ですか

<3>患者を経済的に苦しめる元凶 急増する通院医療費の理由

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 がんの治療費は平均100万円以下といっても、かなり大きな幅があります。とくに進行がんの場合は、入院・手術のほかに、通院での放射線治療や抗がん剤治療が待っています。実はこの10年ほどの間に、がんの通院治療が当たり前になってきています。そして、この通院治療こそが、患者を経済的に苦しめる元凶のひとつになっているのです。

■多くの病院が採用するDPC制度とは

 背景は、「DPC」と呼ばれる包括式の料金が、2006年度から入院に限って本格的に導入され、全国に広まってきたことです。DPCでは、病気の種類に応じて入院費が1日いくらと決まっています。しかも病院は、入院中の検査や投薬をすべて包括料金の中で賄わなければなりません。ただし手術代や内視鏡などは、従来の出来高制で計算します。

 ところが検査や投薬を外来で行うと、その医療費は出来高制、つまりやった回数だけ、使った分だけ請求できるのです。ですから病院としては、手術は入院で行い、検査や投薬はできる限り外来に回すほうが得なのです。

 また、1日当たりの包括医療費は、入院日数が延びると減らされる仕組みになっています。多くのがんで、入院が2週間を超えると、包括医療費が減らされます。そのため、入院日数も劇的に短縮しています。入院と手術に必要な医療費は、実は大した額にはなりません。

 いまでは、がん医療を行っている有名病院・大病院のすべてが、DPCを採用しています。どの病院を選んでも、手術前の精密検査や術後の抗がん剤・放射線治療などは、ほとんどすべて外来で行われています。

 外来での抗がん剤治療は、経口薬なら毎月1~数回、点滴なら数回~10回程度の通院が必要になります。抗がん剤には高価なものが多く、毎月の支払いが数万円から、高額療養費の上限に達することも珍しくありません。また放射線治療では、数週間にわたってほぼ毎日(土日を除く)の通院を強いられます。

 闘病生活が長びくほど、外来治療も続きます。長生きするほど、医療費が膨らんでいくのです。そのため、最近のがん保険の多くは、通院保障を充実させています。もし加入するなら、通院保障のある保険を選ばなければいけません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。