当事者たちが明かす「医療のウラ側」

歯科医が明かす 根管治療の成功率が低いわけ

不完全な治療で歯を失うことも…
不完全な治療で歯を失うことも…(C)日刊ゲンダイ

 一般の方はご存じないかもしれませんが、「日本の根の治療」の成功率は欧米に比べ極端に低いことで知られています。私はその理由は公的保険制度にあると思っています。

■日本の健康保険制度が抱える問題

「根の治療」とはリーマーやファイルと呼ばれる器具で細菌に感染してしまった歯質や神経を徹底的に除去して、根の病気を治療・予防することをいいます。虫歯が歯髄にまで進行した場合などに必要とされる治療です。

 ところが、日本の健康保険制度の下では不完全な治療が横行し、その結果として歯を失う人が後を絶ちません。実際、根管治療の成功率は、欧米ではおよそ90%、日本は50%程度と言う人もいるほど差があります。日本の歯の治療費が欧米に比べて極端に安いからです。

 例えば、東京医科歯科大学教授がかつてはじき出したデータによると、歯石除去をした場合、米国では1万2566円で日本は732円、その差は17倍。抜歯だと米国が3万8993円、日本が2467円で同15.8倍です。

 根管治療の費用はさらに安く、米国の10万8000円に対して日本は5839円で、その差は18.5倍となります。日本の歯科医院が公的保険で根管治療をしようとして、使い捨ての器具やちょっと良い素材を使うと、赤字に転落する可能性があります。

 しかも、根管治療には時間がかかります。正しい治療をしようとすれば、30分~1時間くらいすぐに経ってしまいます。保険診療の歯科医師が根管治療をやりたがらないのは当然なのです。仮に行うとしても、保険診療で認められた旧式の材料と技術を使って治療するしかありません。これでは、根管治療の成功率が欧米と差がつくのは当たり前です。

 政府は80歳までに自分の歯を20本残すという「8020運動」を平成4年から始めています。もし、本当にそれを達成したければ、根管治療の保険負担額を大幅に引き上げるべきではないでしょうか?